弓と禅

昨日はビアガーデンのお片付けを済ませ、お昼に上板橋の平和公園に行きました。前野町子ども食堂のみなさんがバーベキューをやっておりまして、そこにある方をご案内したんであります。

一昨年の子ども食堂立ち上げに際し例によって安直な義侠心で協力を申し出たあたくしにこれまた陰の支援を申し出てくれた方がおられまして、以来毎月お振込みの形で支えていただいており、食堂の方からもぜひ一度お会いして直接お礼が言いたいと言われていたことからこの日の運びとなった次第でございました。

 

雨と日照りの中間のような絶好のお日和の中、ここ数か月節約した分を大盤振る舞いのバーベキューでみなさん美味しくいただいておりました。ご対面も済み支援者ご夫妻と三人あたくしもご相伴にあずかりつつよもやまの話。

聞けばご主人は学生時代弓道で鳴らした方だそうで、そこであたくし思いもよらず長年の謎を解く機会に恵まれたんであります。

それは

 

以前読んだ「弓と禅」という本がありまして、これはドイツ人の哲学者が戦前の日本で東北帝大に招聘された折弓道を習い、その禅なる世界に深く深く魅了されていった顛末を描いたノンフィクションというか日記のような作品でした。

師匠はその道で名人として知られた方だそうで、その教授法は肉体というより精神の講話のように外国人の著者にはとりわけて難解でありました。あなたが弓を弾くのではない「それ」が降りてきて引くのだ、って日本人でもやっぱ分かりませんね。

著者はそれでも懸命に稽古に励みながら、しかし疑問をぬぐい切れないでいたある夜師匠に稽古場に呼ばれます。

当時の的は50メートル離れていたそうで(現在は28メートル)、言われるまま線香一本の明かりを立てた暗闇の中見守るうち師は二射放ちまして、的を見に行ってみると一射は図星を射抜き二射はなんと!その矢を切り裂いて同じ場所に突き刺さっていたという。

これで迷いを振り払った著者はやがて皆伝を授かるまでになったんであります。

 

でもさあ、これってほんとかなあ?とず~っと思ってましてね。

ところがご主人に聞きますとご自身何度か経験されたことがあるってんで。しかもこの方東北大学弓道部で主将を務めておられたそうで、それって旧東北帝大じゃん!まさに弓と禅の舞台だったところなんであります。いや~びっくりした!

 

こうしてまたも不思議なご縁であたくしの長年の疑問が氷解したんでありました。

人と人とのつながりに無駄なものはございませんなあ